新規のコンサル案件
個人事業のT歯科医院様。まあ察しはつく。稼いでいるのにお金が足りないと言うんだろう、、、医療従事者には、あるあるな話しだ。原因は単純なんだが、、、
歯科医院の決算書
さて、この歯科医院の決算書を拝見した。実に立派な決算書だ!個人事業でドクター1名の歯科医院ならば年商5000万を超えれば上出来だ。この歯科医院も年商5000万超えは当たり前で、昨年は6000万超えだ。利益は2000万、減価償却費は1000万、キャッシュフローは3000万を生み出している。これでもお金が回りませんと泣きついてきたわけだ。なんとまあ?
元入金
お金が足りないと言うので次に見る項目は、元入金だ。なんと元入金が▲3000万!想定の範囲内だ。「やっちゃったねー、院長と」ワタシは心の中でつぶやいた。これは法人で言うところの資本金のようなものだ。元入金は毎年変動する。算式で言うと、今期の元入金+所得(利益)+事業主借−事業主貸が翌期の元入金だ。簡単に言うと事業の元手に儲かった利益を足して、生活費を引いた残りが翌期の元手ということだ。個人事業主は、お給料がなくて儲けから生活費をとるという仕組みになっているからこうなる。
その元入金が▲3000万ということは、「院長!生活費を取り過ぎ!」ということなのだ。自分の儲け以上にお金を使っている結果なのだ。本人はそれに気付いていないことが多く、それが大問題。相談があった時点では多少気付いている場合が多いが、あくまでも少数派だ。というのは、相談があった場合は、お金を借りたいという話しがほとんどだからだ。お金を借りてもね、こんな使い方をしていたらすぐ無くなっちゃうよ、です。
院長のお金の使いすぎが原因。まれに奥様の使い過ぎもある。この場合の奥様は実に派手な方が多い。夫婦そろって派手かな?改善するには、生活費の予算を決めてその範囲内でやってもらうしかない。身の丈で生活しなさいということ。窮屈になるけど潰れるよりましでしょう。
借金の返済額
原因は予想通りでしたので、次はキャッシュフローの確認です。このような事案の場合は、返済過多の場合が多い。借入金・未払金の返済額の確認です。合計残高8000万、年間返済額1500万だ。借入金が6本、未払金が5本もある。多重債務?これじゃあ回らない、、、
年間キャッシュを3000万生み出しても返済に1500万で残り1500万。業績は立派なので税負担も高く年間700万くらい。残り800万が生活費となる。利益2000万計上しても使えるお金は800万です。少し大きい会社の社員さんの年収ぐらい?コレが現実。
過去に使いすぎた結果ですね、と院長に説明。院長は叱られた子供のようでした、、、分析結果を報告したまでで、ワタシとしては叱ったつもりはないのですが。
止血
とわ言え改善のお手伝いです。ご依頼いただいたので何とかしてあげないと。現状からいくとキャッシュアウトが多くて出血多量で死にそうな歯科医院。なので先ずは止血です。キャッシュアウトを減らすのが肝ですね。腕のいい先生で既に売上は問題ないので、ここから売上を増やすにも限度がありますので。
止血するために返済額を考えないといけません。返済額を落とすということです。方法はふたつ。メイン行に条件変更を申し出る、あるいは他行に肩代わりしてもらう、です。条件変更した場合は先生の信用に傷がつきます。今後の融資は厳しいものになるでしょう。他行にお願いした場合は新規先になるので信用はそのまま。ただし今までお世話になったメイン行に不義理をすることに。
そして外科的手術、、、
結果、院長の判断は他行にお願いすることに。死活問題だから苦渋の判断。
しかし、止血は大成功。年間返済額1500万が800万になり、キャッシュフローが年間700万の改善です。返済期間は当然長くなりましたが、キャッシュが回っていなかったのでこれは大きいです。
さらに、この肩代わりの際のポイントがあり、公庫はあえて残しました。公庫は公庫の役割があります。その結果、今月増額反復で1000万の調達。十分な運転資金も準備できました。公庫は約定通りの返済が出来ているかを重視しますので、返済を進めて、資金が必要になったら反復をお願いする、これが一番の使い方です。今回の止血作戦は上手く行きましたが、前提として業績がいいからです。業績が悪いとこうは行かない。業績がいいことと、キャッシュが回っていることは別のお話し。
「さあ、院長!次は生活費の見直しですね」ということで、ワタシの管理、監視?は、いまスタートしたのです。院長はこれからが、ホントの意味で辛いかも笑