儲かっている歯科医院の院長がみている経営数字【歯科医院ブログNo.10】

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目次

はじめに

歯科医院に限りませんが、世の中には儲かっている企業と儲かっていない企業が存在します。どの企業も儲かりたいというのが本音でしょうし、儲からないことには自分の歯科医院を維持運営できません。

では、儲かっている歯科医院と儲かっていない歯科医院の差はどこから来るのでしょうか?

それは院長がみる経営数字の視点です。この差について解説していきます。

一番大事なことは「粗利経営」

「粗利」という言葉をご存じでしょうか?

経営において一番大事なことは「粗利経営」です。自分の歯科医院に必要な粗利額を意識して、その粗利を追い求めて行くことが大事なのです。粗利が、企業のエネルギーの源であり、稼ぎ出す力なのです。この稼いだ粗利から、歯科医院を運営する経費を支払っていきます。スタッフの人件費や家賃、水道光熱費、院長の生活費など、すべての経費をまかなう源となる利益のことなのです。

その粗利とは、診療報酬から材料代・技工代を差し引いた残りの利益のことです。院内技工の歯科医院であれば、医療原価は、だいたい15%〜20%の範囲内でしょう。つまり、収入から医療原価を差し引いた残りが、診療報酬の80%〜85%というわけです。これが「粗利」です。

その粗利からあなたの歯科医院を運営する経費を差し引いて粗利が残った状態を黒字といいます。数式で表すと、

粗利>歯科医院の運営経費 (粗利=診療報酬-材料代・技工代)

利益が出ている状態のことですね。つまり、黒字とは利益が出ている状態のことで、具体的には、歯科医院の運営経費より粗利額が上回った状態のことなのです。院長が、このことを意識できているかどうかが、儲かる歯科医院になるか、儲からない歯科医院になるか、運命の分かれ目なのです。

固定費を超えろ!

固定費という専門用語が出てきました。分かりやすく言うと、固定経費のことで歯科医院を運営する経費の中で毎月一定のものです。具体例は、スタッフの人件費、家賃、リース料、水道光熱費などです。

この固定費の特徴は、収入がゼロでも必ず発生するということです。歯科医院を運営するかぎり必ず発生します。支出を伴うということです。仮に収入がゼロだったから、スタッフのお給料をゼロにすることはできませんし、リース料を支払わないということはできません。これらの経費を支払えなくなるという事態にはなりますが。この固定費を支払った残りが院長の取り分となります。

したがって、この固定費を超えていかなければ、院長自身の生活費も取ることができませんし、歯科医院に余剰の資金を残すこともできません。この固定費を超えること、固定費を超える粗利を獲得することが歯科医院の豊かな未来をつくっていくのです。

固定費を超える収入はいくらだ?

これまで固定費を超える粗利の獲得が大事だと説明していきました。そのためには、あなたの歯科医院の固定費を超えるためには、どのくらいの収入が必要なのかを理解しておかなければなりません。

仮にあなたの歯科医院の毎月の固定費が250万円とすると、毎月250万円の粗利を生み出さなければならないわけです。粗利は、診療報酬から材料代と技工代を差し引いた残りのことでした。医療原価率を20%とすると、診療報酬100万円で粗利80万円、診療報酬200万円で粗利160万円です。診療報酬の80%分が粗利として残るわけですね。

このように計算していくと、毎月の歯科医院運営費が250万円としたら、250万円の粗利を生み出す収入は約310万円と算出することができます(250万円÷0.8)。毎月310万円の診療報酬ではじめて運営経費(固定費)を賄うことができるのです。個人事業主の歯科医院の場合は、ここには院長の生活費が入っていないので、必要な収入はもっと上がってきます。

1ヶ月にいくら必要なのか?

個人事業主の場合、院長の生活費は経費になりません。したがって、固定経費の中には含まれていません。なので、さらに院長の生活費分の粗利を稼ぐ必要が出てきます。

前述の収入目標に、院長の生活費を稼ぐ分の収入目標がのってくるわけです。仮に少なく見積もって、月に50万円の生活費で計算すると、約63万円の収入が必要になってきます(粗利率80%で試算)。

そうすると毎月の固定経費をまかなうために310万円の収入が必要だったので、この63万円を加えて毎月合計約373万円の収入が必要ということが分かります。年間約4500万円の収入が必要となります。

ところが収入はもっと必要だった……

ところが、固定的に出ていくものは、クリニックの固定経費、院長の生活費ともうひとつ重要にして大きいものがあります。それは、銀行への返済です。歯科院開業時に大きな借入金をしていますので、その返済分がさらに必要となります。

ただし、歯科機器については、定められた年数で減価償却をしていきます。歯科機器の使用による価値低下分を減価償却費として複数年に渡って経費に計上していきます。経費にするのですが、この減価償却費という経費は、お金の支出を伴わない経費です。お金の支出を伴わない経費なので、実は、損益計算書上の利益より生み出したキャッシュの方が多いのです。少し難しくなりますが、利益=キャッシュではありません。利益と減価償却費を足したものが、生み出したキャッシュなのです。

したがって、借入金の返済額と減価償却費の金額が同じであれば、追加でキャッシュを生み出さなくてもお金は回るのですが、返済額が多い場合は、さらに粗利を上積みしないとお金が回らなくなるので要注意です。

おわりに

儲かる歯科医院になるためには、必ず経営数字のチェックが必要です。そのチェックの際にどの数字に注目するのかが、とても大事なことです。儲かっているかどうか、お金が足りているかどうかを判断できる経営数字をみなければ意味がありません。

実は、会計事務所からもらう試算表や決算書、これらは数字の羅列で見ても分からないという院長がほとんどです。みても分からないならば経営の役に立たないので、見なくていいでしょう。細かな数字より、歯科医院の経営状況が分かる大きな数字をチェックしていけば事足ります。

そして、大事なことは利益が出ているかどうかではありません。歯科医院を運営するために必要なキャッシュを生み出す利益が出ているかどうか、を確認しないといけないのです。儲かっているとは、キャッシュが増加していることをいうのです。

その利益は「粗利」のことです。キャッシュの源泉は「粗利」なのです。固定経費、院長の生活費、借入金の返済、この三つをまかなえる「粗利」がでているかを確認しましょう。不足があればいくら足りないのか、その不足分をどのようにして補うのか、それを考えることが儲かるための経営、粗利に注目する経営なのです。売上より「粗利」が大事な数字なのです。

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