知って得する歯科医院のための節税マニュアル(個人事業主編) 【歯科医院ブログNo.9】

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目次

はじめに

開業後、しばらくすると来患数も増え、診療報酬も上がってきて、税金が気になる時期が訪れます。診療報酬が上がってきたが、税金も上がってきたので節税しなければ、と思われる院長も多いでしょう。または、社会保険診療報酬から所得税の源泉徴収がされているので、税金が増えている実感が少ない院長もいらっしゃいます。今年は還付金が少なかったな、くらいで。

そこで、稼いでも税金ばかり増えてお金が残らないとなる前に、節税の考え方、手法について学んでおきましょう。今回は、個人事業で所得が1000万円ぐらいの歯科医院を想定して節税ノウハウをまとめてみました。

青色申告特別控除

青色申告特別控除とは、確定申告書に貸借対照表まで添付して提出することで所得から一律最高65万円を差し引くことができる制度です。事前に税務署へ届け出が必要で、複式簿記による帳簿作成をしなければなりません。

所得税と住民税を合わせた税率は、所得に応じて15%から55%です。つまり、最低約10万円から最高約36万円の節税が期待できます。複式簿記による帳簿作成は面倒ですが、節税ができ、貸借対照表のある確定申告書は銀行の評価も高くなるので青色申告をされることをオススメします。

専従者給与

所得税法では、生計を一にする家族に対する給与は経費に認められません。経理などを手伝っている奥様に給料を支払っても経費として認めてもらえないということです。ところが、この奥様の給料を経費にすることができる方法があります。

それは、「青色申告」を選択し、「青色事業専従者給与の届出書」を提出すれば、経費として認められるようになります。私の経験上では、年間500万円ぐらいを支給される場合が多いようです。

仮に院長であるあなたの所得が1500万円で、奥様に専従者給与を500万円支払うとすると、院長の所得が500万円減り、奥様の収入が500万円増えます。税金的には、減った所得500万円に対する税金が減り、増えた奥様の500万円分の税金が増えます。その差額が、節税できる仕組みなのです。

所得税は累進課税といって、所得が増えるほど税率も上がる仕組みになっているので、所得を分けたことにより、院長の高い税率から奥様の低い税率が適用できるようになるからです。この例だと、所得税率33%が10%になり、約75万円の節税効果があるでしょう。青色申告は手間がかかりますが、やった方が絶対お得な制度です。

少額減価償却資産

少額減価償却資産とは、一点一組の金額が税込み30万円未満の減価償却資産のことをいいます。通常、10万円以上の資産については減価償却しないといけませんが、青色申告事業者の特典として、30万円未満の減価償却資産については年額300万円を上限として一発で経費にすることを認められているのです。

例えば、パソコンを25万円で購入した場合、購入した年度に全額経費にできるのです。通常は4年間かけて経費にしていくルールになっていますので節税効果は大です。ここでも青色申告が要件になっています。

ふたつの減価償却方法

減価償却の方法が二つあるのをご存じですか?

定額法と定率法といいます。定額法とは、定額という名称のとおり、「毎年同じ金額」で減価償却をしていく方法です。

これに対して、定率法は、「毎年同じ割合」をかけて算出した金額で減価償却をしていく方法で、定額法の割合を2倍したもので計算することになっています。

公式は、未償却残高×償却率です。

例えば、350万円のチェアユニットを購入したとすると、7年で償却しなさいという決まりがあるので(耐用年数といいます)、定額法では毎年50万円ずつ経費にしていきます(350万円÷7年)。これに対して定率法では、1年目は、350万円×0.286=100万円。2年目は、(350−100)×0.286=71万円、3年目は、(350-100-71)×0.286=51万円、となります。

このように定率法が、定額法より経費化のスピードが早いのです。なので、なるべく早く経費にしたい場合などは「定率法」を選択すると節税効果が期待できます。ちなみに経費にする金額はトータルではどちらも変わりません。金額自体での有利不利はありません。

注意点としては、税務署へ減価償却の方法を届けていない場合は、個人事業主は、「定額法」、法人は「定率法」(建物などを除く)と決められています。個人事業主で「定率法」を選択して経費化を早めたい場合は、定率法で減価償却しますという届出書を事前に提出しておきましょう。

短期前払費用

家賃や地代などは、一般的に契約に基づいて月払いが通常なので、毎月分が経費となっていきます。しかし、支払った時から1年以内分の家賃等を全納した場合は、短期前払いの特例により、その前払家賃の全額を経費にすることができます。注意点は、契約書を改訂し、年末までに支払いをすることです。そうすると次の1年分の家賃等を経費にすることが可能となります。

中小企業セーフティ共済

取引先の倒産により連鎖倒産を防止するための制度です。もし不測の事態に直面した場合、掛け金の10倍までの事業資金を借りることができる共済制度です。掛金月額は5000円~20万円まで自由に選べ、増額・減額できます。また、掛金を必要経費(歯科医院は個人事業主のみ)に算入できるので、節税効果があります。

また、共済契約を解約された場合は、解約手当金を受け取ることができます。自己都合の解約であっても、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40ヶ月以上納めていれば、掛金全額が戻ります。節税効果と簿外でのストックが期待できる制度です。

中小企業等投資促進税制

中小企業者等が機械等を取得した場合の税額控除の適用が認められています。歯科医院においては、CT、ユニットチェアなどが該当します。この制度は、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択できます。特別償却で経費が増えますし、税額控除は直接税金を安くするものなので、大きな節税効果が期待できる制度です。

小規模企業共済

これは馴染みの深い制度でしょう。事業主の退職金制度として行政法人中小企業基盤整備機構が運営している共済制度です。掛け金は全額所得控除の対象になります。月々の掛け金は5000円から7万円までで、自由に増額・減額ができます。最大掛け金の年額84万円の場合、課税所得が1000万円を超える方は、年間約36万円の節税効果が見込めます。

さらに、月払いの方は、12月分から年払いへ変更することで、先払いした1年分の掛け金も全額所得控除の対象にできます。

また、払い込んだ掛け金を担保に低利の貸付制度もあり、受け取る際には、現行の税制上退職所得に該当し、優遇税制が適用されます。大変お得な制度ということができます。

生計を一にする親族分もまとめて負担して、まとめて社会保険料控除

国民健康保険や国民年金などの社会保険は、生計を一にする親族分をまとめて負担した場合は、その親族分を含めて所得控除の対象にすることができます。院長が、奥様の国民健康保険や国民年金等の保険料を負担した場合は、院長の所得控除にできるということです。所得の高いほうでまとめて申告することができれば節税効果も大きくなります。

措置法26条概算経費による所得計算

概算経費とは、その名称のとおり、社会保険診療報酬による事業所得の計算を「概算経費率」を適用して計算し、実学計算と比べて有利な方を必要経費にできるというものです。これは租税特別措置法26条に基づき「社会保険診療収入が五千万円以下の医業又は歯科医業を営む個人」となっています。

当然、実学経費の方が概算経費より多ければ、実学により税金計算をすることになります。有利不利の判断をしておくことが必要ということです。

おわりに

節税はとても大事なことですね。無駄な税金を払うくらいなら、事業のために再投資すべきです。しかし、裏技でバーンと税金が安くなる節税というものは存在しません。節税の考え方をしっかり理解して、節税対策を考えなければ得することはないのです。

節税対策といっても専門的になりますので、顧問の税理士事務所任せになっている場合が多いでしょう。少なくとも今回取り上げた内容を正しく押さえているかをチェックするだけも大きく違ってきます。

また、節税対策のしすぎで貧乏になったという事例もあります。お金が出ていく節税をやり過ぎると、税金は少なくなったが、手元の通帳残高も減っていたという、困った状況になることもよくあります。

節税の目的は、不要な税金を減らし自由に使えるお金を増やして、財務体質の強い歯科医院をつくることです。節税は手段であって、目的ではないのですね。ここに注意して、賢く節税をやっていきましょう。

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