はじめに
歯科医院を始めるにあたっては、多額の設備投資が必要なので銀行との取引は欠かすことが出来ません。大きな借入金なので、銀行との長いお付き合いが始まります。そして、お金を借りるという行為は、歯科医院を経営する上でずっと続いていきます。そこで今回は、失敗しないお金の借り方についてご説明します。
多額の借金からのスタート
歯科医院の開業は、多額の設備投資ありきです。よって、銀行から開業資金を借りることが出来ないと始まりません。取引銀行は、院長の知人や歯科ディーラーさんの紹介などで決まっていくでしょう。この最初にお付き合いする銀行がメイン銀行となります。ちなみに、メイン銀行の定義は、一番お金を借りている銀行のことをいいます。
一般的に、借りるお金の使い道によって、設備資金と運転資金と呼ばれます。歯科機器などや内装工事などに使うお金が設備資金、診療報酬の入金が2ヶ月後なので当面の運営資金を運転資金といいます。返済期間は、設備資金が15年〜20年くらい、運転資金が5年〜7年くらいです。
したがって、最低でも開業時の設備資金を返し終わるまでの20年間くらいは、銀行とのお付き合いが続きます。
次にお金が必要になったら?
しばらく歯科医院を経営していると、再びお金が必要になる時は必ず訪れます。診療のために新しい設備を導入したくなったり、自分の車を買い換えたくなったり。また、開業10年くらいすると、設備の経年劣化や故障などでメンテナンス費用が必要になってきます。この2回目の借り入れの時にどこから借りるかがとても重要なことです。失敗しない借り方という観点からはメイン行ではないですよ、と言うことです。
結論から言いますと、メイン行以外から借りて、お付き合いをする銀行の数を増やしておくべきです。銀行との取引は、基本的に3つの銀行と行うのが得策です。
なぜならば、いつもメイン行が対応してくれるとは限らないからです。断られることさえあります。銀行は晴れの日に傘を貸して、雨の日に傘を貸さない、という言葉はホントです。雨の日とは、私たちがお金を借りたい時のことです。業績がいい時は借りてくれと言うのに、業績が悪くなり資金繰りに困ったら渋り出します。貸す側の心理から考えるとそうですよね。
なので、一行取引は危険で我が社の金融の安定化という面からはリスクがあります。複数の銀行と取引をしておくべきです。その中に政府系の金融機関である日本政策金融公庫を入れておくとなお良いです。それは、一般の金融機関が行う金融を補完し、中小企業の事業を支援することを目的としているからです。お付き合いする銀行が三つあれば、まず安心です。
上手な借り方
三行取引がベストということを述べてきました。借り入れが三つあるとそれぞれの借り入れ時期が違うことが多いです。そうすると何が起こるかというと、それぞれの借入金の残高、返済額が違ってきます。ここに上手な借り方のヒントがあります。
キーワードは、反復融資と追加融資です。追加融資は出来るだけ避けるべきです。追加融資とは、新たに借り入れをすることです。そうなると、毎月の返済額が増えます。これが資金繰り上、とても負担になってきます。
これに対して、反復融資という借り方があります。これは既存の融資を当初の借入金額に戻すというやり方です。すでに返済した分の金額を再度借りることになります。例えば、500万円借りていた融資を300万円返していて、今の借入残高が200万円。これを反復すると、300万円お金が入ってきて、借入金残高が当初の500万円になります。この借り方をすると、借金の残高は増えますが、毎月の返済額が変わりません。毎月でていくお金が変わらないので、資金繰りは変わりません。返済負担が増えないので、とても優れた借り方なのです。
また、上手な借り方として、銀行から借りずにリースを活用するという手もあります。例えば、車や多少の歯科機器はリース契約にする。毎月リース料を払えば、設備投資ができます。このメリットは、銀行の融資枠というものを温存することが出来ます。銀行は、それぞれの会社に貸せる上限というものを設定しています。あなたの歯科医院のこの融資枠を温存しておくことが出来るのです。将来のリスクヘッジになります。
まとめますと、融資は複数行取引にして、まず反復融資を考える。また、リースの活用で融資枠を温存しておく、これが上手な借り方なのです。
おわりに
借金が好きな人は少ないでしょう。嫌いな方が多いのが普通です。しかし、歯科医院は開業時に多額の設備投資が必要なので、借金は嫌いだからしないという訳にはいきません。開業後も色々と資金が必要になる産業です。だからこそ、上手な借金の仕方を知って、資金繰りに苦しむことがないようにしておくべきです。
銀行が借りてくださいというのも、銀行の営業ということを知るべきです。複数行と上手にお付き合いをして、競わせ、事業資金を円滑にグルグル回すくらいが丁度いいのです。院長の意思で資金を調達して潤沢な現金が手元にあることが、銀行と上手に付き合うスタートであり、上手なお金の借り方につながっていきます。