二期比較の決算書
新規の相談をうけたH社。頑張っているらしい。数年、なかなか利益が出ていなかったけど、前期は黒字計上をし、新店舗を出したとのこと。頑張っている会社の決算書を見るのは楽しいものだ。今回は3店舗目を考えているらしく、その資金繰り相談。まずは損益計算書の当期利益を見てみると、前々期は赤字が200万、前期は黒字500万、数字はよくなっている。年商1億の会社です。業績を把握するために売上から順番に見ていくと、早速違和感が???
黒字なのに、ほんとは赤字?
前期は500万の黒字だけど、ほんとは赤字?と思った。それは、経費をみていくと大きく減少した科目があったからです。それは役員報酬!業績が厳しかったから、社長は報酬を減額したんだ。それは立派なことだけど、、、 前々期の役員報酬は1000万、前期は300万。この変動の意味することはなんでしょう?前々期も前期も売上げは同じ1億円で、前々期は役員報酬を1000万とって、赤字200万。前期は役員報酬を300万に減額して黒字500万。ということは、、、
鶏が先か、卵が先か?
法人は役員報酬をあらかじめ決めておきます。原則、期の途中での変更はできません。前々期は、役員報酬1000万とって赤字200万ということは、役員報酬を取る前で利益800万ということ。前期は役員報酬300万で黒字500万ということは、役員報酬を取る前で利益800万。つまり、前々期も前期も同じ業績ではないの?前期は赤字から黒字転換できていますが、この二年は実は同じ業績では?ということが言えますよね。前々期は役員報酬を取りすぎで赤字、前期は役員報酬を減らしたので黒字になっただけ。それは見かけの利益じゃないの? 新店舗出店に伴う融資のために決算書を黒字にしたかったのかな?
損益計算書って必要?
損益計算書は、会社の「利益」を知ることができる決算書類です。収益・費用・利益が記載されており、収益から費用を差し引いた「利益」を知るための書類なので、会社が「費用を何に使って」「どれだけ売上が上がり」「どれくらい儲かったのか」を知ることができる。一般的にこのような説明がなされます。では、このH社の利益は、損益計算書を見て、正しく知ることが出来るのか?見ただけでは正しく知ることはできませんよね。読み解く必要があるようです。また、損益計算書は、社長の意思表示がなされているとも言われます。「黒字にしたい!」という意思表示の結果か。
キャッシュも回らず??
このH社、前々期も前期も業績は一緒。だから同じようにキャッシュも回っていませんでした。借入金の返済が年間1200万、減価償却費が年間800万。利益500万だと回るけど、社長は役員報酬300万で暮らしていけるのか?